素材へのこだわり

[夏の水菓子]

清流に稚鮎が跳ねる頃、若葉の緑も次第に色濃さを増します。
雨に濡れたアジサイの彩りがひときわ鮮やかになり、間も無く梅雨の季節が訪れます。
蒸し暑い日が多くなると見た目にも風味も涼しげな水菓子がとても美味しく感じられます。

夏は「涼しさ」が最大のおもてなし
 茶道の聖人千利休が残した利休七則に「夏はいかにも涼しきように」とあります。日本の夏はとくに蒸し暑く過ごしづらいのが特徴ですが、その暑い季節の一時をいかに涼しく過ごしていただくか、おもてなしの基本を説いた茶の湯の心得です。風鈴、すだれ、打ち水などで部屋のしつらいを涼しく演出するだけでなく、目にも舌にも涼味あふれるお茶請けをご用意する事が主人の「粋」のみせどころというわけです。
 見た目ものど越しも涼しい夏のお菓子といえばやはり「水ようかん」「葛切り」など昔ながらの日本の水菓子。夏向きに甘さを押さえてつるんとした舌触りやのどごしが楽しめるように工夫します。葛、わらび粉、寒天など昔ながらの天然素材を駆使していかに透明感のある涼しげなお菓子を作るかが職人の腕の見せ所。砂糖や果汁や果物、あわせる素材によって仕上がりも全く違うため、素材の質や量に応じた厳密な温度や分量調整が必要です。

地元産の優れた素材「寒天」
 昔ながらの天然ゲル(ゼリー)化素材といえば「寒天」。恵那市山岡は「細寒天」の産地でもあり、信頼できる品質の寒天が手に入りますが、先ごろの健康ブームで、まだ品薄が続いているようです。
 テングサ、オゴノリ等の海藻を主原料とする寒天は天然多糖類で、加熱すると溶解し、冷やすことで凝固してゲルになります。 寒天と同じく冷やすとゲルを形成するものにゼラチンがありますが、原料も性質も全く違うものです。ゼラチンは動物性であるため人の体温で溶け、口の中で液体に戻り、とろんとした柔らかな食感が得られます。
 海藻から作られた寒天は質量の8割が食物繊維です。この豊富な食物繊維の働きが腸の環境を良くしコレステロール血糖値を下げるという実験結果も報告されています。また低カロリーでとても満腹感があるのでダイエットの補助食品としても脚光を浴びています。

お客様を想うこころ
 このようにとても優秀な素材である寒天も少々欠点があります。口に入れた時に体温で溶けないため、のど越しの柔らかさに欠けます。そのために合わせる果物や果汁の酸味や酵素の量に合わせてゼラチンや、ゲル化剤を使います。ぜひ皆さんに食べていただきたい貴重な厳選素材で水菓子を作るため、多少のゲル化剤(増粘多糖類)の添加をご理解頂きたく思います。
 茶の湯の心得にあるおもてなしの神髄は「相手を想う気持ち」です。夏のお菓子のたたずまい一つ一つに、お客様を想う職人の「粋」や「趣向」を感じ取っていただければ冥利に尽きるというものです。

 里の菓工房の夏の水菓子は、旬の素材を夏らしく楽しんでいただけるよう、素材ごとの「食感」や「のどごし」に趣向を凝らし、形や色にも情緒を楽しんでいただけるよう工夫しました。

 夏に一服の涼を運ぶ水生地の数々をどうぞお楽しみください。

細寒天・葛(くず)・蕨(わらび)粉。水生地づくりには欠かせない天然素材。

夏栗きんとんの生地は
気泡を混ぜて軽く。

果汁たっぷりの
寒天生地は歯ごたえが特徴。

火加減に気を配りながら
蕨粉を練る。

つやつやもちもちに
仕上がった蕨餅。

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